なんか最近ETFと国債のポートフォリオ投資がとても人気なようで、あちこちにETF投資を勧める記事が散見されます。いちいち数千もある資産の変動を考える必要もないですし、なによりCAPM理論によればETFなどのインデックスファンドと国債の組み合わせが最も合理的でパフォーマンスのよいポートフォリオを組めると数学的に証明されているので、そのことも人気の一つとしてあるでしょう。
うーん…別にどうというわけではないんですけど、ETFを勧めている人はもしかしてCAPM理論を未だに信じているんでしょうか?CAPMを使って現在価値の計算をやっている人はもう殆どいないというこのご時世に…
というわけで、とりあえず自分の考えを整理するという意味でも、CAPM理論について書いてみることにしました。
大前提
ETFと国債の組み合わせによるポートフォリオが「数学的に合理的」なポートフォリオとなるためには、以下の4つの仮定を満たすときに限られます。
- 全世界のすべての投資家が『マーコヴィッツの平均-分散モデル(mean-variance model)』を元に投資を行なっている。
- 投資家のすべてがすべての投資可能な資産について、その期待収益率、分散、共分散に同じ値を付与している。
- 無リスク資産の貸し借りに関する一意的な無リスク資産が存在し、取引コストは存在しない。
- 投資期間は1期間であるとする。
それではこれらの仮定をもう少し深く見てみることにしましょう。
1.全世界のすべての投資家がマーコヴィッツの平均-分散モデルを元に投資を行なっている。
『マーコヴィッツの平均-分散モデル』というのは全てのポートフォリオの組み合わせの中から最もリスクが低くなるポートフォリオの組み合わせを選択するモデルです。確かにこのモデルが主張していることは、リスクを最大限回避するという意味で重要かもしれません。ですがこのモデルを全ての投資家が利用していると仮定するのには流石に無理があると思います。というか個人投資家でETFは知っていても、このモデルを知っている人は少ないですよね。主従逆転状態です。
2.投資家のすべてがすべての投資可能な資産について、その期待収益率、分散、共分散に同じ値を付与している。
結構きつい仮定です。分散、共分散については過去の値動きから算出できるのである程度同じ値になる可能性はありますが、期待収益率については過去の値動きがまったく当てにならないので、ファンダメンタルズから推測するしかありませんし、その推測も個人でバラバラです。それなのに投資家の全てが同じ期待収益率を推測していると仮定するのはかなりナンセンスな話です。
3.無リスク資産の貸し借りに関する一意的な無リスク資産が存在し、取引コストは存在しない。
これはある程度納得できる仮定です。国債などの流動性が高い無リスク資産においては買値と売値の幅は非常に狭いですし、取引コストも扱う金額が大きければ微小量として無視できるくらいの量です。
4.投資期間は1期間であるとする。
結構この仮定を忘れられている気がします。ETFの投資が合理的になるときの条件は、『1期間(1年間とか1ヶ月とか)』で取引した場合の話であって、多期間で投資した場合では異なった結果が得られます。どういうことかというと、この仮定では1期間の間に新しく売買取引を行なうことができないのです。たとえ暴落、暴騰が起こってもです。理論を簡単にするためとはいえ、現実的でない仮定です。
というわけで
CAPM理論は結構無理な仮定をおいた上で証明してしまった理論なので、これらの仮定を1つでも信じられないという人はあまり使えない理論です。
ただインデックスファンドとアクティブファンドの平均的なパフォーマンスを比べてみると、インデックスファンドのほうが殆どのアクティブファンドよりも良いパフォーマンスを示したということは事実ですので、困ったらETFに投資してみるといいかもしれません。
まとめ
ETFと国債への投資はパフォーマンスは良いかもしれないけど、数学的に信用できるものではない。投資方法の一つとして見るべき。
追記(8/10)
対象の記事にコメントできませんね。なんか本人の知らないところでうだうだ言うのはあんまよくないと思っているので、引用部分を置き換えました。
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